【ヨガ哲学】構成物質グナとは何か?
今回のブログでは、ヨガ哲学において重要な考え方、知恵である「グナ」についてご説明します。
三つのグナ。純質(サットバ)、激質(ラジャス)、暗質(タマス)とは?
グナとはプラクルティ(物質)を構成する三つの要素です。
以下引用。
*1「純質はその汚れなき性質によって光を与え、苦から解放されている。それは幸福と知識と同一化し《自己》を束縛する。
激質は、激質的性質により、渇望と執着を生じ、行為とその結果への執着によって《自己》を束縛する。
暗質は、無知から生じ、一切の個体を迷わせ、過誤、怠惰、睡眠によって《自己》を束縛する。
純質は《自己》を幸福と結びつけ、激質は行為に、暗質は知性を曇らし過誤に結びつける。」
*1「純質が優勢な時、激質と暗質を抑えつけ、激質が優勢だと純質と暗質を抑え、暗質が優勢だと他の二つを抑圧する。
身体、心、感官すべてに《知識》が行き渡る時、純質が成長する。
激質が優勢になると、貪欲、活動、さまざまの私欲を求める行動、心の不安定、欲望といったものが盛んとなる。
暗質が優位を占めると、鈍感、不活発、過誤、迷妄が生じることを知れ。
純質が高まっている時死んだ人は、至高の真理を知る人びとの汚れなき地に到達する。 激質の高まった状態で死んだ人は、行為に執着する人びとの間に生れ、同様に暗質状態の人は無知蒙昧な人の間に生れる。 純質的行為の報いは、幸福と汚れがないこと。激質のそれは貪欲、暗質は無知を得る。 純質から知識が生じ、激質からは貪欲、暗質からは過誤、迷妄、無知が生じる。 純質に拠る人は上方(天国など)に行き、激質に拘わる人は中間地帯(現世)に、最低の要素にすがる人は下方へ行く。」
*1, 著者不明, マハーバラタ より引用
インド神話である、マハーバラタでは、特に有名なシーン、バガヴァットドギーターがあります。それはアルジュナという勇敢な戦士が、戦いの前に実の家族を殺すことをためらっている時に、聖バガヴァットが現れ、迷うアルジュナに教えを諭すシーンです。
上記の引用はその中でも、グナについて語られるいる部分です。
聖バガヴァットは、この世の物質には三つの構成要素グナがあると説きました。それが純質、激質、暗黒質です。
純質、激質、暗質の特徴まとめ。
バガヴァットギーターの中の教えから、それぞれには以下の特徴があることが伝えられています。
純質的特徴
行為:執着、欲望、偏見もなく、見返りを望まない行為
行為者:執着、我執を離れ、堅固(確固不動)で活力に満ち、成功不成功に動じない人
知性:正しい行為と正しく行為を止めること、なすべき、なさざるべき行為、恐れと恐れを知らぬことは何か、束縛と解脱とは何かを知ること
堅固さ:ヨーガによる堅固さによって心と気息と感官を制御すること
喜び:ヨーガの修得によってのみ喜びを見出し、それによって苦の終熄に到る。最初は毒のごとく(修行のはじまりでは)、終りには甘露(生命の水)のごとくなり、自己(アートマン)との合一から生じた心の静寂さをうる
激質の特徴
行為:大きな苦労をし、行為の見返りを求め、我執に満ちた人の行為
行為者:激情的で貪欲で、行為の報いを求め、残酷で、清浄さを欠き、喜びや悲しみに動じ易い人
知性:何が正しく何が間違っているか、何をし、何をしてはいけないかについて正しく理解していないこと
堅固さ:結果を期待し、その堅固さによってダルマ(徳)、アルタ(実利)、カーマ(愛欲)に固執すること
喜び:感官とその対象との結びつきによって生じ、最初甘露のごとく終りは毒のごとき幸福
暗質の特徴
行為:結果も、損失も他者への害も、己れの能力も考慮せず、迷妄によってなされた行為
行為者:自制心と敬虔さに欠け、暗愚で、頑な、高慢にして人を欺き、他人のものを盗み、怠惰で気力に乏しく、仕事を常に先に延ばしたがる人
知性:無知に被われ、間違ったことを正しいと思い、すべての事柄を逆に考えること
堅固さ:その堅固さによって暗愚な者は睡眠、恐れ、悲嘆、無気力、驕慢さを捨てないこと
喜び:始めも終りも自己を惑わし、睡眠と怠惰と愚かさから生じる幸福
まとめ
インドの神話において、物質を構成する三つの構成要素グナがあることが教えられています。純質を得るには、ヨーガによってであり、真の幸福もヨーガによってのみ得られるとされています。その中でも聖バガヴァットは特に、知恵のヨガ、行為(カルマ)のヨガが大切だと教えています。私たちが純質を得て純質的幸福を得るには、暗闇に惑わず、激しい感情や行動を控え、正しい知恵や善良な行いをすることが大切だと教えています。グナは我々の肉体を含むあらゆる物質を構成する要素であり、我々の死後の世界の行き先をも決めるものです。
この記事の執筆者
Lakshmi Ji Ganesha Ji Yoga & Ayurveda 運営スタッフ、木村謙太郎。2021年青山学院大学国際政治経済学部卒業。2023年5月にインドリシケシに初めて訪れ、本格的にヨガをスタート。以降経験合計半年間、3回に渡りリシケシに滞在。RYT500ヨガ講師資格、アーユルヴェーダマッサージ資格保有。
参考文献
ー*1: 著者不詳, マハーバーラタ